現代経済研究室は「IT革命、金融化、グローバル化と現代資本主義」というテーマでプロジェクト研究を行っている。近年のIT革命は生産様式から生活様式に至るあらゆる場面にいきわたり、金融資本の過剰な蓄積は実体経済を凌駕し、バブルとその崩壊を繰り返し、金融危機の原因を作り出している。グローバル化と国境を越えた資本の自由な移動は、少数の多国籍企業による世界市場の支配を許し、国家の規制の及ばないオフショア市場の隆盛を招いている。リーマンショック、コロナ・パンデミックを経て、新自由主義の破たんと、気候変動の危機の中で、資本主義の限界が広く論じられるようになっている。当研究室は内外の英知を結集し、これらの課題に取り組んでいる。
各種研究室
Research Laboratory
現代経済研究室
金融問題研究室
金融問題研究室は貨幣、銀行、証券に関する現代的課題の解明を目指す。これらは近年大きく変化しており、その本質が忘れさられようとしている。貨幣とはなにか。本来の中央銀行の金融政策とはなにか。国債の無制限発行は可能か。これらの原理的課題をまず究明する。次いで貨幣・銀行・証券の現代における変容について検討する。これについては特に日本の問題を取り上げ、現代の日本銀行、地域金融機関、政府系金融機関、国債発行の現状とその在り方などについて検討する。必要に応じてこうした問題についての専門家を招いて報告を受け、研究室員以外の人々とともに討論を行う。
中小企業問題研究室
中小企業問題研究室は、現代中小企業が抱える問題点を「未来志向の視点」から把握し、当該問題点とその仕組みを明らかにして、実学(理論と実践の双方向的融合)を援用して行なう研究室である。その成果は「政経研究時報」等で公表することにより、社会全体が健康で豊かな未来に希望が持てる研究成果をめざす。
そのために、中小企業問題研究室内に「実学研究会」を設置し、当該研究会で中小企業問題の研究テーマを選択し、その研究成果をテーマごとに「政経研究時報」等で発表する。各メンバーは切磋琢磨し、本研究室の設立目的に則った実学的研究行動をめざし、実社会に貢献する。
公共政策研究室
現代日本では、財政赤字の拡大や少子高齢化、社会保障制度、地域間格差など解決しなければならない多くの課題を抱えている。そうした状況下で、1990年代以降に地方分権の進展という環境変化にともない、地方自治体による政策形成の重要性が高まっている。その一方で、地域経済に目を向けると、グローバル化の影響から産業の空洞化が進行し、地域の基盤産業が置かれている状況は厳しさを増しているといえる。
経済学や財政学、経営学の研究員を中心に構成される本研究室は、対象とする地域の社会・経済構造を客観的に解明・分析した上で、地域の持続的な発展につながる政策を提言することを主な目的としている。
憲法研究室
憲法研究室は、設立当初から、日本国憲法の標榜する「立憲民主平和主義」の国内・国外での定着・発展のための理論と政策の探求を目的として活動を行ってきた。2018年度から 2020年度までは、政経研のプロジェクト研究として、「日本国憲法の平和政策:その再構築とグローバルな展開に向けて」をテーマに、公開研究会を開催しながら研究を重ねてきた。そして、2022年度からは、ロシアによるウクライナ侵攻という歴史の冷厳な転回を直視して、改めて、グローバルな非核平和と平和的生存権の”現実化”の再構築にむけて取り組む研究をスタートさせた。
国際関係研究室
本研究室は、日本とアジア諸国との関係を中心として、政治、経済、文化、歴史などにおける国際関係を研究することを目的としている。
国際関係研究の対象範囲は広いが、当面は主として日本とアジア諸国(中国、ASEAN加盟国、アジアNIES)との関係を研究する。特に日本と中国との関係を研究する。中国の大学の研究者との学術交流を行い、中国の研究者を招いての日中学術研究会も開催する。日本と中国の研究者の間での報告と討論においては本研究室所属の研究員などが通訳を行う。必要に応じて欧米、中南米の実情に詳しい講師を招いての研究会も開催する。
研究会は面接方式及びZoom方式で開催する。本研究室所属研究員および研究協力者内の研究を行うとともに、一般の研究者が参加する研究会も開催する。研究会は専門分野の報告と討論を中心とするが、研究員などによる資料調査も行う。
会計問題研究室
グローバル化の進展は会計の世界では2000年の国際会計基準導入に象徴される。日本の会計は欧米にキャッチアップし、ハーモナイズする作業に追われ、戦後会計制度創設とその批判の背後にあった矜持は失われた。私達は未来の社会をよりよいものにしたい。ある価値目標のもと利益、財務諸表や監査を通じて、組織は承認され、権力機構の中で役割を与えられる。我々の価値目標は何か、その指標として利益や財務諸表や監査機構はどのように役割を果たしているのであろうか。
具体的には新植民地である宇宙空間の会計、経営分析によるGAFAMの分析、様々な組織の「価値」測定、その「価値」は世界史的にいかなる変遷を辿り、今後どうあるかを考えている。
戦争災害研究室
本研究所は付属博物館として、東京大空襲・戦災資料センターを設置している。東京大空襲をはじめとする空襲や戦争による一般民間人の被害の実相を明らかにし、それを伝えて いくことが使命である。
センターの資源を活用した空襲・戦災研究の場として、2006年6月に設置されたのが、戦争災害研究室である。吉田裕館長をはじめ、当該分野の専門研究者が所属し、全国の空襲 ・戦災研究者と交流しながら、空襲・戦災研究や空襲記憶史、空襲被害者運動史の研究を開拓・推進してきた。その成果は、報告書や書籍、論文のほか、シンポジウムや特別展示の開催のかたちでも公開され、また、常設展示の充実にも反映されている。
なお、科学研究費の交付を受けた本研究室の共同研究には、以下のようなものがある。
- 「東京大空襲体験の記録化と戦争展示」(2007 ~ 2010年度)
- 「東京大空襲と関東大震災の救援活動に関する比較災害史的研究」(2010~2012年度)
- 「戦争末期の国策報道写真資料の歴史学的研究-国防写真隊と東方社を中心に」(2011~2013年度)
- 「戦中・戦後の「報道写真」と撮影者の歴史学的研究-東方社カメラマンの軌跡-」(2014~2016年度)
- 「戦後都市社会における空襲被災者運動の歴史学的研究」(2015~2017年度)
東京中小企業問題研究室
東京磁石株式会社の倒産後に全国金属組合の東京磁石支部がその資産を引き継いだ。同支部が解散すると、その資産を引き継いで、東京中小企業問題研究所が1976年に設立された。同研究所は中小企業の経営および労使問題に関する調査・研究を行うことを目的としており、『中小企業問題』という機関誌を刊行した。同研究所は2006年1月に財団法人政治経済付属研究所となり、2011年に同研究所の公益財団法人化に伴い、東京中小企業問題研究室となった。
本研究室は『中小企業問題』の発行と研究活動を存続させていたが、現在は『中小企業問題』の総目次の作成や中小企業問題に関する小論を『政経研究時報』に連載する活動などに取り組んでいる。
大島社会・文化研究室
1996年に財団法人政治経済研究所の附属研究所となった大島社会文化研究所は、2011年に公益財団法人政治経済研究所大島社会文化研究室となった。
本研究室は、鬼嶋淳氏が研究活動の中心となっており、埼玉県入間郡大井村(現・ふじみ野市)で戦後医療運動を展開した大井医院と大島慶一郎医師に関する「大井医院・大島慶一郎関係資料」を紹介することを通じて、地域に残る戦後史資料の可能性を探ることを課題としている。
同資料が2001年にふじみ野市立大井郷土資料館に運搬されて以降、本研究室は同資料の調査・整理・目録作成に従事してきた。2023年度に目録が刊行される予定である。
本研究室は、今後、資料の有効活用について検討する。