最近、『サステイナブルな地域と経済の構想―岡山県倉敷市を中心に―』という学術書が御茶の水書房から刊行された。政経研理事の相田利雄さんを中心とする、法政大学サステイナブル研究教育機構・法政大学大原社会問題研究所の「労働政策研究会」に集ったメンバーによる共著である。
この研究会は、2009年8月に発足して、1月1回のペースで研究会を行ってきており、幾度にもわたって倉敷に出かけ、岡山県・倉敷市の行政関係者や産業・企業の責任者から聴き取り調査を行ってきた。また、2011年度から3年間、文部科学省科学研究費の助成も受けて倉敷市の繊維産業の技能継承や人材育成に関する調査・研究を続け、合わせて倉敷市の諸問題・まちづくり、医療・福祉について調査・研究を進めた。
相田さんによると、法政大学大原社会問題研究所の起源は岡山県・倉敷市にあり、大原社会問題研究所とつながりのある大原美術館、倉敷中央病院、岡山大学資源植物科学研究所などと「大原ネットワーク」が構築されているため、聞き取り調査等を円滑に進めることができたそうだ。以下、相田さんに聞いてみた。
―大原社研の起源はわかるが、何故研究対象が倉敷なのか?
《相田》①エネルギー産業・重化学産業から軽工業まで日本の諸製造業が集積していること、同時に、②医療・福祉産業の就業者が多いこと、加えて、③街並み保存や公害環境問題をめぐって市民活動が活発であること、④産業構造や人口構造の変化が社会生活にどのような影響を与えるのかを把握するのに好適地であること、である。
―倉敷市の地域構成と産業編成はどうなっているのか?
《相田》旧倉敷市、児島地区、水島地区、真備船穂地区などの地域で構成されている。同市には、旧倉敷市の美観地区などの観光産業、児島地区の繊維産業、水島地区のコンビナート、そして真備船穂地区の農業といった、日本の産業の縮図が存在する。
―この研究でポイントになる、あるいは特に重視したのは何か?
《相田》地域産業における中小企業問題、雇用問題、技能継承問題、それから大気汚染や「光問題」などの公害問題ならびに公害患者の生活問題である。
―この研究の意義は何か?
《相田》倉敷市を対象とした地域社会の調査研究は、現在の日本における地域社会の再生のみならず、今後の日本社会の進むべき道筋を示すものと考える。今回の研究はそういう試みでもある。
普段お茶目な相田さんも、研究は真剣である。