2022年度第4回公開研究会のご案内
日本の賃金が上がらないことが国民の生活を苦しくさせるだけでなく日本経済を停滞させるものとしてきわめて大きな問題となってきた。なぜ賃金が上がらないのだろうか。この理由については労働組合が賃上げ要求を抑制していたとか企業の生産性が低かったとか様々の理由が挙げられている。だがそれらが賃金が上がらない本当の理由といえるのだろうか。
雇用問題を考える上では雇用社会をジョブ型(職務を特定した雇用)とメンバーシップ型(人を基準とした雇用)とに正しく区別する必要がある。そのうえで、労働組合を職業別あるいは産業別の労働組合と企業別労働組合とに区別し、賃金決定を職務に基づく賃金と年功制などに基づく賃金とに区別しなければならない。こうした理解に基づいてこそ日本の賃金問題を正しく把握することができるのである。産業別団体交渉が困難な日本では産業別最低賃金を決めることが難しい。
今回の報告では賃金に関する様々な誤解を批判し、日本の賃金が上がらない基礎構造を明らかにする。
また、日本で取りうる産業別最低賃金決定方策を明らかにし、賃金上昇の展望を示す。
報告者は日本における労働政策に関するトップクラスの研究・研修機関である独立行政法人労働政策研究・研修機構の労働政策研究所長の濱口桂一郎氏という労働問題の権威である。
濱口桂一郎氏のプロフィールと関連著作
労働省(現厚生労働省)出身。東京大学客員教授、政策研究大学院大学教授などを経て、2017年4月から現職。
主要著作:『新しい労働社会―雇用システムの再構築へ―』(岩波新書)、『ジョブ型雇用社会とはなにか――正社員体制の矛盾と転機』(岩波新書)、「日本の賃金が上がらないのは『美徳の不幸』ゆえか」(『世界』2023年1月号)等。