公開研究会のご案内
テーマ 「金融緩和政策と「財政ファイナンス」を巡る諸問題―各種データを手懸かりに考察―」
報告者 田中信孝氏(元岩手県立大学教授)
日 時 2024年5月18日(土)15時~17時
場 所 Zoom報告+会場現地報告(※報告者はZoom参加)
参加費 研究会員無料
※zoom招待URLおよび事前資料は、お申し込みされた方へ、前日午後5時頃にお送りいたします。
異次元金融緩和政策の問題点を、「財政ファイナンス」を巡る問題を中心として各種データに基づいて明らかにします。
▼概要
2022年以降、インフレ率が政策目標「2%」を超えたが、海外発の各種コスト押上げがきっかけだった。「異次元金融緩和政策」が期待した経路(マネタリーベースの増加→マネーストックの増加→物価上昇)で生じたわけではない。一方で、超低金利政策を背景に大企業は為替経由で収益を改善させ、あわせて顕現した「資産効果」も富裕層の需要を刺激した。生活必需品の価格高騰が格差や貧困の深刻さに拍車をかけ、不安定就労・低所得世帯を中心に国民は閉塞感を募らせている。
いくつかの論点を挙げる。
・日銀の「異次元金融緩和」は国債のマネタイゼーションにより「財政ファイナンス」の実態を露わにし、大量の国債保有と国債費の抑制で、政府の放漫な財政運営の継続を容易にした。
・金融機関の収益が悪化したり仲介機能が麻痺したりしたばかりでなく、金融に期待される効率的な資源配分機能を弱め、実体経済における生産性の向上を阻害した。
・「出口政策」で、日銀が多額の有利子負債を抱え込み続け、財務状況が悪化することが懸念される。
・財政再建策は日本経済の潜在成長率との整合性を持たせつつ「出口政策」をも前提にしたより実態に即したかたちで進める必要がある。
【報告者田中信孝氏略歴】
1946年山形県生まれ。
1975年武蔵大学大学院経済学研究科博士課程退学。
1976年参議院常任委員会調査員、1987年国立国会図書館調査及び立法考査
局調査員、1989年八戸大学商学部助教授、1993年同教授、2007年岩手県立大
学総合政策学部教授、2012年同大学を退職。
▼専攻
財政学、金融論
▼著書等
・『現代財政・税制論』(共著)税務経理協会、1986年
・『現代の財政と税制』(共著)文眞堂、1994年
・『地方財政読本』(共著)東洋経済新報社、2003年
・『政府債務と公的金融の研究』敬文堂、2008年
・「検証・日本の財政―財政赤字の構造分析」『成城大学経済研究所報』2014年4月
・「東日本大震災における復興財政の10年と課題」『熊本学園大学経済論集』2022年3月
・「異次元の金融緩和政策と物価上昇」『自治総研』2022年11月 など。
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