公開研究会のご案内
下記の要領で公益財団法人政治経済研究所公開研究会を開催します。当セミナーは附属機関の東京大空襲・戦災資料センターの市民講座の一環となりますが、研究会員・維持会員は無料で参加が可能です。
テーマ 戦争とトラウマ―東京空襲の体験画から
報告者 田中禎昭氏(専修大学文学部教授)
日 時 2024年11月9日(土)13:30~15:30
場 所 会場現地またはオンデマンド配信
参加費 研究会員・維持会員無料
※今回の公開研究会はzoomでの配信はございませんのでご注意ください。
※一般の方は東京大空襲・戦災資料センター公式ホームページよりお申し込みください。
空襲体験画に秘められた戦争トラウマの記憶を辿る。語られぬ民間人の傷跡に光を当て、心の深層に刻まれた記憶を探求します。
▼概要
災害や事故など特異で衝撃的な出来事の体験は、言語化できない記憶として体験者の心の奥底に封印され、その深い傷は後々の人生に大きな影響を及ぼし続けます。こうした体験の記憶は心理学ではトラウマ性記憶と呼ばれ、とくに深刻なケースではPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの疾患を伴い、精神医学による治療の対象と位置づけられています。そのなかでも戦争体験がもたらすトラウマについては、アメリカにおけるベトナム帰還兵の心的外傷研究を嚆矢として、今日までに多くの研究が蓄積されています。しかし、このテーマは従軍兵士について取り上げられることが多く、空襲体験のような民間人の戦争被害がいかなるトラウマをもたらすのかについては、いまだ十分な究明がなされていません。そこで本報告では、東京空襲体験者の作成した絵画(空襲体験画)とその証言を元に、体験者の記憶に孕まれているトラウマ的な特徴・傾向を分析し、今日も置き去りにされていると言わざるを得ない民間人における戦争被害の「心的側面」に光を当てます。
なお、本報告で取り上げる東京空襲体験画は、報告者が墨田区立すみだ郷土文化資料館在職中に空襲体験者に呼びかけ収集したもので、約300点に及ぶ絵画が同館に収蔵・展示されています。これらの絵画を詳細に分析すると、体験者の言葉にし難い記憶の断片が絵のディテールの中に現れ、トラウマ的な表象として描かれていることがわかります。絵を通した調査者と体験画作者との対話の中から見えてきた記憶の表象とその意味について考えます。
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